これはしばらく前のことである。
昼間、我がお隣の庭から声が聞こえた。
「ぎゃぁ~~!!」
真昼の空気を切り裂く絶叫である。
お隣のNさんの奥さんの声だ。
何だろう?
「ミミズ!うわぁ~、気持ち悪い!」
Nさんは庭で草むしりをしていていて、そこ
で見つけたミミズに大騒ぎしているのだ。
それにしても大きな声だ。
そんなに大声を出すようなことなのだろうか?
ここは私は顔を出さないでおこう。
たかが、ミミズである。
それに、こういう場面では、知らなかった、
聞こえなかったとした方がご近所付き合いと
してはスムースにいきそうだからだ。
時に知らんふりも一種の気配りになるだろう
と判断したのだ。
だが、聞き耳は立てている。
「もう、本当に嫌になるねっ!」
Nさんは庭に放して遊ばせている愛犬にそう
話しかけている。
犬もミミズくらいで何言っているんだ?と思っ
たかもしれない。
それにしても、ミミズがそんなに怖いのだろう
か?
確かに見た目は余りよくはない。
しかし、それほど大騒ぎするほどの生き物で
はあるまい。
むしろ土を耕してくれるので益をもたらす方が
大きいと思う。
それが、私の認識だった。
でも、世の中にはミミズが怖い人、苦手な人
はいるようだ。
お隣のNさんも、そのうちの一人ということにな
る。
~続く~