クルマのエンジン音で目が覚めた。
このあたりは、この時間帯にはクルマも走らず人通りも
無い。
昼間には聞こえない音や声が、この時間帯以降はかな
り聞こえてくる。
エンジン音は我が家の前の道あたりからである。
駐車場に入れる際の切り返しに手間取っているようだ。
お隣のNさん宅からだ。
クルマのドアが開き人が降りる音がする。
「どうも、すみません」
若い男性の声だ。
Nさんの奥さんの声が応える。
「残念だったわね。ヤドカリ、どうする?うちでそのままに
しておくね。明日もまたおいで」
ムムム、この会話は何だ?
クルマが走り出していく音が聞こえる。
半分眠った脳みそで推理する。
何が残念だったのか?
ヤドカリ?
明日もまたおいで?
あぁ、そういうことか。
実はNさん宅には、小さな女の子が遊びに来ていた。
就学前の子のようだ。
その子がNさん宅に泊まろうとしたのだが、家が恋しくて
帰りたいと言い出した。
それでお父さんが迎えに来たのだ。
ヤドカリは、昼間に水路や田んぼに遊びに行った時に獲
ってきたのであろう。
あぁ、夏休みの子供によくあることである。
これは、これで一種の風物詩である。
私は疑問を解決し、再び眠りについた。