不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

「ヤドカリ、どうする?」

 夜の12時半、私はすでに就寝中だった。
 クルマのエンジン音で目が覚めた。
 このあたりは、この時間帯にはクルマも走らず人通りも
無い。
 昼間には聞こえない音や声が、この時間帯以降はかな
り聞こえてくる。
 エンジン音は我が家の前の道あたりからである。
 駐車場に入れる際の切り返しに手間取っているようだ。
 お隣のNさん宅からだ。
 クルマのドアが開き人が降りる音がする。
 「どうも、すみません」
 若い男性の声だ。
 Nさんの奥さんの声が応える。
 「残念だったわね。ヤドカリ、どうする?うちでそのままに
しておくね。明日もまたおいで」
 ムムム、この会話は何だ?
 クルマが走り出していく音が聞こえる。
 半分眠った脳みそで推理する。
 何が残念だったのか?
 ヤドカリ?
 明日もまたおいで?
 あぁ、そういうことか。
 実はNさん宅には、小さな女の子が遊びに来ていた。
 就学前の子のようだ。
 その子がNさん宅に泊まろうとしたのだが、家が恋しくて
帰りたいと言い出した。
 それでお父さんが迎えに来たのだ。
 ヤドカリは、昼間に水路や田んぼに遊びに行った時に獲
ってきたのであろう。
 あぁ、夏休みの子供によくあることである。
 これは、これで一種の風物詩である。
 私は疑問を解決し、再び眠りについた。