Nさんが庭のミミズに絶叫した日から大分経っ
た頃のことである。
私は、その日の午前中パソコンをいじっていた。
Nさん宅の庭の方から話し声が聞こえてくる。
庭で庭いじりをしながら、どなたかと話をしてい
る。
決して聞き耳を立てているわけではないのだが、
聞こえてくるのだから仕方がない。
話の相手は、Nさん宅の出入りの業者さんのよ
うだ。
天候など季節の話題が中心のようだ。
雑草が生えて困る、といったことを話している。
そんな中でNさんがこう言った。
「ほら、こんなのがいるよ。ヘビ」
返事をする業者さんの口調が明らかにこわばっ
ている。
Nさんは、ヘビを棒のようなもので突ついている
らしい。
えぇ~!ヘビ!
ヘビがいるのか!
と言うより、Nさんはヘビが怖くないのか?
業者さんは明らかにその場から出て行きたい
様子だった。
だが、立場上それは出来ない。
社会人としてはジッと我慢するのがマナーであ
ろう。
Nさんは、その後ヘビをどこかに持っていったよ
うだった。
Nさんはミミズが怖いのに、ヘビには平気なの
か?
普通は逆でではないのか?
少なくとも私はそうだ。
日常生活の中でヘビを見かけることは滅多にな
い。
だが、何年かに一度、道などで遭遇すると、驚
いてしまう。
自身の冷静さを失わないようにするだけで必死
なのである。
私はとにかくヘビが怖いのだ。
ヘビに咬まれたことがあるわけでもないのに、
何故か怖い。
これは先天的なものなのかもしれない。
う~ん、世の中にはいろいろな人がおられるよう
だ。
ミミズに絶叫してもヘビには何ともないNさんの
様な人もおられる。
ひょっとして、Nさんはマングースの生まれ変わ
りか?
世の中には私の積み重ねてきた常識では測れ
ないような人が沢山おられる。
Nさんも、そんな中のお一人のようだ。