エンジニア・ロジャー・ニコルスは、どのような
エンジニアだったのか。
私は、音響業界史上における最高のエンジニ
アだと捉えている。
ニコルスは唯一無二の才能の持ち主だとみて
いる。
かなり優れたエンジニアでも既製の機材を上手
に使うことにより、最適の音を録るのが普通であ
る。
エンジニアなので多少はそれらの機材に手を加
えることもあるだろうが、その範囲は限定的だろう。
それが、ニコルスの場合は、必要な機材は自分
で作り上げてしまうのだ。
デジタル時代に入ると、機材に加えソフトまで自
分の欲するように組み上げてしまった。
エンジニアであり、発明家であり、改革者であっ
た。
同業のエンジニアから「こんなに頭の良い人が、
なぜ音楽の録音などしているのか不思議だった」
とまで思わせるほどの才人だった。
頭が良くて、手先が起用で、精力的に動く人だっ
た。
それに加えて音楽そのものを聞き取る能力にも秀
でていた。
それは、スティーリー・ダンのベッカー&フェイゲン
が、ニコルスを決して離そうとしなかったことからもわ
かる。
ニコルスは録音技術の最先端を走りつつも、音楽
に対する感性も優れていたのだ。
このようなエンジニアは、他にはいない。
これはニコルスが担当したドナルド・フェイゲン
の名盤「ナイトフライ」からの1曲である。
極めつけの名曲、名演である。
~続く~