スティーリー・ダンの中心メンバーであるウ
ォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲンは、
気難しそうな人達のようである。
アメリカ人でロック・ミュージシャンという先
入観からは大きく外れている。
ロックミュージシャンと言うより、研究がうま
くいっていない大学の研究者のように見える。
そんな二人だったが、ロジャー・ニコルスと
は馬が合ったようだ。
ニコルスは快活でエネルギッシュ、アウトド
ア好きな人である。
ベッカー&フェイゲンとは正反対である。
正反対の人間の方がうまくいく、ということ
はよくあることではある。
何より、ニコルスの傑出したエンジニアとし
ての才能が、ベッカー&フェイゲンの信頼を不
動のものとしたのであろう。
そんなニコルスは、何とスティーリー・ダンの
アルバム・ジャケットにその姿が載っている。
彼らのセカンド・アルバム「Countdown to
Ecstasy」である。
このアルバムは、デビューアルバムが予想外
のヒットをしたため、急遽制作が決定したもので
ある。
どうやら、レコード会社は、当初からスティーリ
ー・ダンを一発屋程度にしか見ておらず、売れる
内に売っておこう、という魂胆だったようだ。
ちなみに、このアルバムではジャズ・ベースの
巨人レイ・ブラウンが一曲だけ客演している。
何と、あのレイ・ブラウンである。
ちょっと信じられないが本当のことである。
その他、スコット・ラファロを見いだしたことでも
知られるヴィクター・フェルドマンがビブラフォンと
パーカッションで、参加している。
系のミュージシャンを多用することになるのだが、
すでにセカンドアルバムにおいて、その兆候が
見られるのである。
また人気ロック・ギタリストのリック・デリンジャ
ーも「ショウ・ビズ・キッズ」でスライドギターを披
露している。
なお、これらの外部から起用したサポートミュー
ジシャンに対するギャラはアルバム制作経費とし
ては扱われなかった。
それらはベッカー&フェイゲンが受け取る印税か
ら自動的に差し引かれるという契約になっていた
そうだ。
もう無茶苦茶である。
デビュー前のベッカー&フェイゲンは、そんな屈辱
的な契約でも呑まざるを得ないような評価しかされ
ていなかったのだ。
まさに拾われた状態である。
え?どこに載っているのか?
左から二人目にいるウォルター・ベッカーの
手前に手が見える。
これでは、少々判りにくいので拡大してみる。
何とロジャー・ニコルスは左手だけ、ジャケット
写真に写っていたのだった。
これはスティーリー・ダンのジョークではあろう
が、それでもこれは珍しいことだ。
手だけではあるが、ミュージシャン以外がアル
バム・ジャケットに載ることは極めて異例である。
の絆はより一層深まり、バンドの解散後のソロア
ルバムでもエンジニアリングを担当することになっ
た。
~続く~