選挙カーのウグイス嬢は、聞いていて実に面
白い。
その殆どがウグイス嬢というよりウグイスおば
さんである。
若い世代は、出来ることなら選挙カーに乗って
アナウンスし続けることなどやりたくない。
それで、もう少し上の世代にお鉢が回ってくる。
ウグイス（元）嬢たちは、何とかして自分の声
を若くしようと発声に気をつかっている。
家の固定電話に出る時の声に近いものがある。
不自然に「よそ行き」なのである。
「あれ？別人じゃないか？」というような声なの
である。
若干トーンを高めにし、声に艶を出そうといつも
と違う声の出し方をしている。
そんな声をスピーカーで大音量で流しながら走
っていくのだ。
これは聞いていて笑える。
音が大きいので、普通なら「うるさい！」とか思
いそうなところだが、それを差し引いても余りある
面白さがある。
昨日、回ってきた選挙カーのウグイスおばさんは、
無理な発声を続けたためか、途中で咳き込み始め
た。
そう言う時には、マイクのスイッチを切って咳をす
るものだが、そこは慣れていない人なのだろう。
「ゲホッ！ゲホ、ゲホ」
咳き込む声が、そのまま大音量で流れてしまった。
当人はマイクのスイッチを切ったつもりだったのだ
ろうが、切れてはいなかったのだ。
そうとは気づかぬそのウグイスおばさんは、咳が
終わると何ごとも無かったかのように候補者名の連
呼を再開した。
知らぬが仏である。
～続く～
