夜7時半、外はすっかり暗くなっている。
私は歯磨きを済ませたところだった。
「〇〇でございます!」
選挙カーだ。
いきなりの大音量である。
こんな急に聞こえるとは、どういうことだ?
途中まで無音で走っていたのだろうか?
あるいはわが家の近くに潜んでいたのか?
規則では夜8時までは街宣運動をしてもよいこと
になっている。
選挙戦もこの日までである。
それも残りあと30分である。
そのある意味貴重な時間帯にわが家周辺に来る
とは、余程当地の票を当てににしているようだ。
スピーカーの声は、候補者本人である。
「地元の〇〇でございます」
まぁ、地元は地元でしょうね。
でも、市会議員選のような小さな狭いくくりの中で
地元と言われても、ちょっとピンとこないなぁ。
「大変厳しい戦いとなっております」
そんなことを言われても、困るなぁ。
それ以前に厳しいかどうか、よくわかるなぁ。
一人一人、一軒一軒尋ねて歩いたのだろうか?
スピーカーの声は、半ベソのような口調になってい
る。
泣き落としか?
だが、大音量での泣き落としと言うのも説得力に
欠けるなぁ。
「なにとぞ、よろしくお願いします」
ハイわかりました。
でも、私は期日前投票を済ませているんです。
選挙カーの声は悲壮感を増しながら、遠ざかって
いく。
賑やかでちょっとうるさいのも、もう終わりである。
結果はどうなるのか?
月曜日の朝が楽しみである。