不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

台風18号直撃の夜 その②

 念ずれば夢は叶うとかいうけれど、それも
時と場合による。
 あるいはケース・バイ・ケースと言うべき
か。
 来て欲しくなかった台風が当地を直撃して
しまったのだ。
 私の希望としては、台風は紀伊半島の南方
あたりで右折して太平洋上に抜けていく、と
いうものだった。
 今年はそうして消えていった台風がいくつ
もあったので、これもそうなれば良いな、と
思っていたのだ。
 これは楽観論なのだろうか?それとも逃避
なのだろうか?
 しかし直前までの予報は、当地を直撃する
コースであった。 
 人は最悪の結果が予想される時には、その
予想を無視したがるものである、ということ
らしい。
 私はそれらの台風の予想を見てみぬふりを
していた。
 つまり私は事前の心の準備が出来ていなか
った、ということである。

 さて、台風が我が家の上空を進みつつある
時、私はどうしていたのか。
 こうなってしまうと、もうどうしようもな
い。
 ここは開き直るしかない。
 どうにでもなれ、とまではいかないが、じ
たばたしても仕方ない、という気になってき
た。
 家の外では、数分おきに何かが飛んで来て
何かにぶつかっている音が聞こえる。
 だが、強風のためそれを見に行くことも出
来ない。
 環境の確認は人間の原初の欲求のひとつで
ある。
 異様な音だけ聞こえても、それを確認出来
ないというのはつらいものがある。
 外では一体何が起っているのか?

 こんな強い台風は、初めてだな、少なくと
も私が生まれてからは最強に違いない。
 私は他にやることもないので、いつもの通
り掃除機をかけることにした。
 そんな時に掃除をするのか、余程の綺麗好
きなのだな、と思われウかもしれないが決し
てそうではない。
 やることが無いので、いつもの朝のローテ
ーションをこなそうとしていただけである。
 いつもはうるさい掃除機の音も、台風の音
に消されてしまっている。
 掃除が終わってラジオをつけて聞いていた。
 すると、ラジオが黙ってしまった。
 停電である。
 災害に停電はつきものではある。
 5~6分で停電は復旧した。
 我が家はオール電化ではないが、電気が切
れると急に心細くなってくる。
 それから20分後、また停電し、その10分
後に復旧した。
 これが、その後3回ほど繰り返された。
 何回も停電が続くと、もうそれにも慣れて
しまい何とも思わなくなってきた。
 人間は開き直ると案外強いものである。

 ~続く~