洗面台が詰まった。

　昼過ぎに洗面台の掃除をした。
　ここ数日、水の流れが悪くなってきている
のに気がついたのだ。
　水が少しだけたまり、それからゆっくり流
れていくのである。
　私は、こういうことはそれなりの症状が出
ないと手を出さない。
　もっと早めにそれなりの手入れをしていれ
ば良かったのだろうが、私はそういうことは
それなりの症状が出るまで放っておくことが
多い。
　見て見ぬふりである。

　私は、小さい果物用のフォークを排水口に
突っ込んだ。
　そして、フォークをひねって詰まったもの
を掻き出した。
　それは黒い汚れの塊であった。
　どぶの様なにおいがする。
　描いても掻いても出てくる。
　果たしてこの洗面台は、こうした掃除をし
たことがあったのだろうか？
　少なくとも私の一人暮らしになってからの
この2年では初めてである。
　次に使い古しの歯ブラシで汚れを掻き出し
た。
　それらの汚れは大体30ccほどあった。
　これだけ詰まっていれば流れが悪くなるは
ずだ。
　掃除は15分ほどで終わった。
　私は作業が終わってから水を流してみた。
　しかし、水は流れない。
　洗面台に溜まったままである。
　どういうことだ？
　どうやら、掻き出したものとは別の塊が排
水管を塞いでしまったのか。
　あるいは、掻き出したつもりが、余計に汚
れを詰まらせてしまったのかもしれない。
　もう一度歯ブラシを突っ込んでみるが、今
度は何の変化も無い。
　どうしよう？
　この洗面台が使えなくとも生活に支障は無
いとしても、このままにしておくわけにもい
かない。
　ここはプロにお願いするしかあるまい。
　タウンページをめくってみる。
　見ると、今盛んに宣伝しているフリーダイ
ヤルの水道業者の広告が沢山載っている。
　こういう業者は法外な料金請求が問題にな
っている。
　これらの大きい広告の業者は無視して、普
通の業者さんを探す。
　どこにしようか。
　私は自宅から最も近い店に頼むことにした。
　私は時々その店の前を通ってその店の存在
は知っていたのだ。
　電話をすると、今修理に出ているので、そ
れが終わったら向かわせます、お伺いする前
にもう一度電話をします、とのことだった。
　それでは待つとするか。
　15分ほどすると、そのお店の人が来た。
「電話せずに直接来ちゃいました」
　そうですか。
　私は状況を説明した。
　業者さんは、持参したライトで照らしなが
ら早速修繕を始めた。
　作業は10分ほどで終わった。
　料金は3000円だった。
　領収書をもらいながら、私は業者さんと話
した。
「フリーダイヤルの業者があるでしょう？あ
あいう業者にはお気をつけ下さい」
　そうなんですか。
「あぁいう業者は、出張費とか何とかでこれ
位の修繕で8000円以上要求したりするんです
よ」
　そんな話をよく読みます。

　水周りが復旧して一安心した私はテレビの
お笑い番組を観た。