不二家憩希のブログ

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NHK「探検ロマン世界遺産・リバプール」を観た。その③

 リバプールにはアイルランド系の住民が多
い。
 アイルランド系の人達は19世紀に起きた大
飢饉で着の身着のままでアイルランドから大
量に移住してきたのだ。
 同じ言語である英語を使用するとは言え、
元から住んでいた英国人から見ると、彼らは
外国人である。
 しかも、アイルランド系の人達はケルト
に属する。
 ケルト系民族とは、古代にローマからブリ
テン島、今の英国に移住してきた民族でロー
マ人を祖とする。つまり、ラテン系民族であ
る。
 元からリバプールに住んでいた英国人とは
民族的に異なる。

 当てがあるわけではない大量のアイルラン
ド人の移住はリバプールに混乱をもたらした。
 招かれざる外国人であるアイルランド人は、
リバプールでは下層の階層に置かれることに
なった。
 同一言語で民族が異なると言うのは、私達
日本人には理解しにくいことだが、それでも
異質な存在に対する冷たい扱いと言うのは大
体想像できる。
 
 ビートルズは、そんな社会状況の中で生ま
れたのであった。
 英国人としては主流とはみなされていない
者が持つ抑圧された心情を、ビートルズは反
抗と言う形で表した。
 これが他の民族のケースとかだったら恨み
節になってもおかしくはないのだが、ビート
ルズはウエットなものを拒否しドライかつク
ールな音楽を作り出したのだ。
 ビートルズの音楽が、優れたものであって
も、もっと湿っぽいものであったならば、こ
れほどの人気と評価を獲得したとは思えない。

 番組では、ジョン・レノンがデビュー前ま
で住んでいた伯母の家も紹介された。
 その家を案内した人もアイルランド系の人
のようだが、妙な怨念を感じさせないカラッ
とした感じの人だった。
 
 リバプールは今後、芸術の都を目指してい
るそうだ。
 怨念からは芸術は生まれない。
 恨み節がいくつか出来て、それで終わりで
ある。
 今後のリバプールの発展は、アイルランド
系の人々の明るさに拠っているように思える。

 番組は文化遺産紹介の番組と言うよりも、
一種の歴史ドキュメンタリーのようになって
いたが、時にはこういう番組も良いな、と思
った。
 NHKもたまには、良い仕事する。