その移動事務所の前には、必勝の黄色いのぼりが何本も立っ
ている。
黄色ののぼりと言うのは、目を引く。
当地のスーパーでは、大安売りの時に黄色ののぼりを使って
いる。公約も大安売り、というわけか？
こういうのぼりは、どこかで売っているのだろうか。私がた
まに行く面白雑貨のお店には無さそうだ。
何とかして運動を盛り上げようとしている町内の方々の努力
には、本当のところ感心する。
あまり、茶化しては気の毒である。
微妙にサイズの合わない背広を着た運動員のおじさんが、数
人いる。普段着付けない背広を着ているので、動きもぎこちな
い。
頭には、白地に墨字の必勝の文字入り鉢巻。
橋本真也亡き後、白鉢巻をする人を見るのは、選挙戦くらい
のものだ。
鉢巻に加えて、締め慣れないネクタイまでして、体を縛って
の苦行中である。
それ以外の運動員は、派手な黄緑色のウインドブレーカーで
ある。皆が着ているので、自分も着る。
この色で、前回当選したとあれば、今回もこの色である。こ
の際、センスは無用である。
そこへ、選挙カーがピットイン。
車は大きな拍手と歓声に包まれる。中に氷川きよしでも乗っ
ているのか？
乗り組みのクルーを交代して、再び出陣。
「それっ！がんばって来い」とおじさんたちから檄が飛ぶ。
拍手と歓声に押し出されて、選挙カーは出て行く。
乗組員は？
あー、またウグイス奥様だ。
ウグイス嬢は休憩中か？それとも、最終日は有権者の情にす
がると言う古典的な作戦か？そういうことならウグイス奥様の
方が適任だ。
近所のおじさんたちの真剣な表情と言うのは、滅多に見られ
ないので逆にちょっと笑える。
だが、真剣に物事に取り組んでいる人を笑うのは失礼である。
私は、せめて顔だけでも真面目なふりをして、その場を離れた。
