街道沿いのその家は、良く手入れされた長い垣根に囲まれてお
り、少し時代のあるつくりの母屋は、その家が旧家であることを
示している。
この旧家は、選挙期間中はこの町内から出馬している候補者の
選挙事務所に使われている。
見るからに豪華なつくりの家に選挙事務所を設置する、という
のも、市議選ならではである。
これが、国政選挙の場合、簡単な仮設の建物で済ませるのだが、
仮設と言ってもお金がかかる。
市議選の場合は、そんな予算もないので、候補者の自宅を選挙
事務所にするか、支持者から提供されるスペースを、そのまま使
う。手作り感いっぱいである。
支持者も素人っぽくて、とてもよい。支持者に素人も玄人もな
かろう、と思われるかも知れないが、その支持する気持ちの素朴
さを見ると、支持者には素人と玄人が存在していることが分かる。
これが、国政選挙となると、いわゆるエライ人、というのが幅
を利かせる。威張った上に、横柄な指示までする。
選挙の応援は、皆、原則奉仕の気持ちで参加しているので、む
やみに威張られると内心カチンと来る。だが、そこは皆さん大人
なので、不愉快な気持ちは腹の中に収めておくだけにしておられる。
こういう威張る人というのが玄人の支持者である。
玄人の支持者は、自分が利権とズブズブになっている。そうな
ると、自分以外の人間は、自分の道具に見えてくるらしい。
市議選には、こういう玄人の支持者が選挙事務所で威張り散らす
ことは、格段と少ない。利権が小さいと、玄人は顔すら出さない。
悪党こそ、損得で動く。
損得は、悪党の行動原理である。
熱気はあっても、どこか和気藹々の市議選もあと少しだ。