自転車に乗った3人小学生と、すれ違う。
宿題のない春休みは、新学期へのほんの少しの不安を除けば、1年
の中でも、楽しい期間である。
朝晩はまだ寒いものの、今日は春の日差しである。
元気に何かを話しながら、小さな自転車たちが、遠くになっていく。
私は、いつもは行かない方向にペダルを踏んだ。
途中、ビンテージギターの店の前の信号機で止まった。
久しぶりに見るその店は、店舗の半分を喫茶店にしたようである。儲
かっているから、喫茶店を始めたのか、ギター屋が芳しくないので、店
の半分を喫茶店にしたのか?
外から見たのでは断言はできないものの、喫茶店につき物の、コーヒ
ー豆を卸している業者の名入りの店名ライトが、置かれていないところ
を見ると、本業がうまくいっていないので、素人判断の我流で始めたも
のらしい。
当地は、人口当たりの喫茶店が異常に多い地域で、数メートル歩けば
すぐに喫茶店に行き当たる、という地域である。
完全に飽和状態にあるのに、また新しい店が開店するのである。
この地域の人は、コーヒー好きの人が多いのかもしれないが、そんな
コーヒーでお腹を、ガバガバいわせて過ごすほどでもない。
どうして、この地域の人たちはそんなに喫茶店を始めたいのだろうか?
未だに、よくわからない。
当地は、堅実な土地柄とも言われるが、喫茶店経営は堅実な業種なの
であろうか?
私の知人も、かつて喫茶店を経営していたのだが、うまくいかず店を
手放してしまった。ビルのテナントのその店の後にはやっぱり、喫茶店
が入ったのである。
ここには、秘密の喫茶店シンジケートでもあるのだろうか?
赤信号が変わり、私はゆっくりとその店の前から離れた。