昨日の巨大アシナガバチ騒動で、私はハチを紙で掴もうとした。
だが、私の亡くなった父ははるかに大胆だった。
父は蜂の子が大好きだった。
現在では各種商品化されているが、やはり天然物、自分で採取した蜂の子にはかなわない。
鮮度や味が全然別物なのだ。
「どこそこにハチの巣がある」と聞くと父はすぐにすっ飛んでいった。
蜂の子が欲しいからである。
父は、普段の服装のままで手袋、マスク、ゴーグル等は一切しなかった。
殺虫剤も持っていかなかった。
手ぶらで現場に行く。
その態勢でハチの巣を取り外し、持ち帰るのである。
「そんなことをしたら、ハチに襲われるだろう!」と言われるだろう。
だが、父はハチには一度も刺されなかった。
ハチしてみれば自分たちの巣と蜂の子が持っていかれるのである。
全力で抵抗、反撃して当然である。
しかし、父は平気でハチの巣を素手で掴んでいた。
見ている私は(超常現象を観ているようだ)と思ったものだ。
父は生涯において一度もハチに刺されたことがない。
ハチに対して恐怖心ゼロだったようだ。
「そんな人いるわけない」と言われるかもしれない。
私は父に「スズメバチに二度刺されると死ぬらしいよ」と注意したことがある。
だが父は「ハハハ、馬鹿だな」と笑って聞いていた。
どういった仕組みで父がそんな事が可能だったのか?
身近にいた私にもまるでわからなかった。
父も詳しく話すことは無かった。
父はハチには無双だった。
信じられないかもしれない。
だが、本当に実在したのだ。