私は診察室に入り医師の前の椅子に座る。
先生が検査結果を見てこう言った。
「抗体はありますね」
えぇ~!?
本当?
先生はにこやかにこう続けた。
「基準値よりもずっと多くあります。昔、接種を受けていたんでしょうね」
そんなはずはない、と思ったが、ここで反論しても仕方ない。
私の世代では風疹の予防接種は受けていないのだ。
それなのに、何故抗体があるのか?
私は尋ねたい気持ちを抑え、診察室を出た。
医院を後にしての帰り道、私は記憶をたどる。
抗体があるということは、かつて風疹に罹患したことがあるということであろう。
だが、私にはそんな記憶はない。
どうなっているんだ?
人体の不思議というやつか?
いずれにせよ、これで予防接種を受ける必要はなくなったということである。
これはラッキーである。
医院に来る手間がなくなった。
私には嬉しい出来事であった。