朝6時50分、稲光が光った。
私は雷鳴までの秒数をカウントする。
6秒。
距離は約1.8kmか。
近いな。
雷鳴は連続して鳴っている。
ガラスが振動で震えている。
朝から雷か。
数分して、再びまた稲光そして雷鳴である。
今度も間隔は6秒である。
当地では雷が5年ほど前に市内の公園に落ちた。
あの時はそれまで体験したことがないような音がした。
地響きがした。
その公園と我が家の距離も約1.8kmである。
1.8kmも離れているのに、こんなに大きな音がするのか、と
思った。
どこかへ行ってしまわないかな。
とりあえず自分の周囲からは遠ざかってほしい。
なんとも凡庸な考えである。
その後、数回同じくらいの間隔で稲光が光り雷鳴が鳴った。
稲光は白光ではない。
白熱灯のような色薄いベージュ色を帯びているように見える。
日光とは違うようである。
これは美しいな。
黒雲で真っ暗な中に稲光である。
これだけの照明は人工では無理だろうな。
1.8km離れていると観察するだけの気持ちの余裕がある。
もう少し近ければそれどころではないだろう。
稲光と雷鳴はその後30分ほど続いた。
雷が通り過ぎると黒雲はゆっくりと消え始めた。
午前10時過ぎには濃い青空が広がり陽光がさすようになった。
朝の雷が遠い昔のような気がした。