不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Nさんと酒。④

 朝から酒臭いその人は手も震えていた。
 見てすぐわかるアルコール依存症である。
 だが、その人は「自分は依存症ではない」と言い切る。
 どうやら当人は本気でそう思っていたようだ。
 他の依存症の人について「自分はあんなぶざまではな
い」とも言った。
 当人に自覚症状が無いのだ。
 あるいは気づいていても認めたくはないのかもしれない。
 さて、Nさんはどうか?
 Nさんは自分で「俺は依存症だよ」と明言している。
 本当に依存症だったら、こうは言わないのではなかろう
か?
 ”依存症並に飲んでいる”ということを自嘲を込めて言っ
ているのではないか。
 Nさんは数年前にも所属する町内会の会長を務めている。
 その前後の年度にも町内会の役員の常連として尽力した。
 気安い人柄で堅実な仕事ぶりの人なので、周囲も役職を
頼みやすいのであろう。
 町内会の役職をやっていれば依存症ではないと言うつも
りはない。
 いろいろと面倒くさい人間関係で溢れている町内会におい
て、出来るだけ波風立てず、時に毅然と仕切り運営していく
には、依存症の人では無理である。
 もちろん朝から飲んでいると言うこともないようだ。
 それではひとまず安心ということで良いのだろうか?
 どうなのだろう?

 ~続く~