考えている。
肉体はただの流動体である。
日によって組成は変わっていく。
その細胞は、日々生と死を繰り返し入れ替わっていく。
一日と同じ日が無い。
部位にもよるが、大体7ヶ月で新旧の細胞が入れ替わ
るらしい。
そのため1年前の肉体と今の肉体とは同じものではない。
だが、多くの人は肉体は同じままだと思っている。
生まれてからずっと同じままだと思っている。
そう思っているのは心だけである。
記憶だけである。
実際には肉体自体は変わり続けている。
肉体は、ある種の枠の中を行き来している細胞の流れ
である。
それは個体というよりも空気に近い。
肉体は空間の中のある一点に留まっている空気のよう
なものである。
儚く漂うだけである。
肉体自体には堅固な芯は無い。
芯があると思いこんでいるのは心だけである。