私は人間の肉体は強制収容所だと考えている。
もちろん独房である。
人は出生と同時にこの独房に閉じ込められる。
そのため、人は生まれると同時に泣き始める。
それも大声で全身の力を使って泣く。
人としてのスタートが泣くことなのである。
親たちはこの泣き声を聞いて喜ぶ。
産声と言って特別な名前を付けている。
だが、赤ん坊は嬉しくて泣いているのではないと思う。
嫌で泣いていると思う。
「あぁ~、この世に生まれてしまったよ~!」
「嫌だぁ~!」
出生という急激な環境変化に対応できず泣いている、と
言う説もある。
しかし、赤ん坊が泣くのは出産時だけではない。
生後8カ月から1年ほどは、ずっと泣いている。
一日中時間を問わず泣いている。
成長に伴い、時間や回数は減るが、やはり泣く。
すぐに泣く。
2~3歳くらいまではこれが続く。
その後はようやくこの世に諦めがつくのか、泣かなくなる。
人生の本当の始まりは、この2~3歳頃からだと思う。