Iさん分を受け取り、気分良く次のお宅へ伺う。
TMさんもご在宅だった。
私が玄関に着いた時、ほぼ同時に他の女性も着いた。
私は急いでいないので、その女性に譲った。
「ワ〇ミです」
宅配給食サービスの会社の配達員らしい。
TMさんには奥さんがおられる。
だが、もう30年近くその姿を見たことが無い。
10年ほど前にお宅に伺った際に、家の奥の方から声だ
け聞こえてきたことがある。
その時私は旦那さんと玄関先で話していたのだが、私
はその声は聞こえなかった振りをした。
この世界には知らずにいた方が良いこと、聞かずにい
た方が良いことがある。
私はプライベートの詮索はしない。
先方が話してくれたら聞くが、そうでなければ知らない
ままでいる。
奥さんがいれば奥さんが食事の支度はするだろう。
元々TMさんの奥さんは料理好きな人だった。
私が初めて食べたホームメイドのパンは。TMさんの奥
さんが焼いたものだった。
奥さんは料理をしなくなったのだろうか?
「こちらがお弁当で、こちらが~~」
配達の女性が説明し、旦那さんが受け取る。
私は気配を消して玄関からは見えない位置に身を隠
した。
~続く~