開式の11時になった。
葬儀業者の司会により、式は始まった。
威厳を持たせようとしてなのか、もったいぶった口調であ
る。
「ご導師様、ご入場です。皆さま、合掌でお迎えください」
ご導師様か。
偉そうな呼ばれ方だな。
「お坊様」と言うよりも特別な感じがして良いのだろうか。
会場後方から僧侶が入場してくる。
通夜と同じ僧侶である。
読経が始まる。
重みの無い読経だが、そこは聞き流す。
よそ様の葬儀にケチをつけてはいけないからだ。
焼香が始まる。
遺族から行われ、次に班からの参列者の番になる。
一般参列者よりも重く扱われている、ということであろう。
そして一般の参列者の番になった。
参列者は一けた、数人である。
そのため焼香はすぐに終わってしまった。
席に戻り、読経を聞く。
奥さんが「(故人)は、そんなに付き合いが無かったから、
人は来ないと思う」と言っていたが、本当にその通りだった。
故人自身の知己が少ないのはともかく、家族の関係者
も少しは来るだろう。
しかし、それも少ない。
意外である。
~続く~