通夜式が始まった。
僧侶が入場してくる。
式場司会者が「合掌でお迎えください」とアナウンスする。
私は形だけの合掌をする。
僧侶と言ってもピンからキリまでいる。
誰彼構わず僧侶だからと言って手を合わせるほど私は大人しくはない。
それでも無視していると悪目立ちするので仕方なく合掌する。
偉そうな僧だな。
歩き方でそう感じる。
どこの僧だ?
読経が始まった。
修証義だ。
曹洞宗か。
修証義を葬儀に使う曹洞宗のセンスが信じられない。
「生前に悪い行いをしたから地獄に落ちる」といったことをネチネチと語っ
ているからだ。
そんなことを、この場で言いますか?
感覚がおかしいのか?
経文で普通に聞いていても普通の人は聞き取れないから何も感じない感じら
れないだけである。
読経、焼香が終わり喪主挨拶になった。
喪主は旦那さんである。
「家内は我儘な私を受け入れ、いつも優しかったです。他の人に対しても、
いつも優しく接することを心がけていました」
その通りである。
おばさんは、常に配慮ある態度で人に接してきた。
誰にでも分け隔てなく優しかったと思う。
そういう人は案外少ないものである。
優しい人は沢山いるが、別け隔てがあるのだ。
相対する人によって態度が変わってくる。
それも、その人の性なのかも知れない。
~続く~