遠藤太津朗さんは、卓越した演技力を持った俳
優だった。
あのような自然な台詞回しは、どのようにして会
得したのであろうか。
遠藤さんは、ごく若い頃から俳優活動を始めてお
られたそうだ。
自分の新劇の劇団も運営されていた。
だが、俳優の世界は厳しい。
遠藤さんほどの演技スキルがあっても、俳優だけ
で食べていけなかった。
業界から評価されていなかったわけではない。
安次郎の"小早川家の秋"にも出ている。
世界の小津から声がかかるのだから一流の中の
一流である。
テレビドラマにも60年頃から数多く出演している。
それでも、役が小さなものばかりだったようだ。
ようやく俳優一本で暮らしていけるようになったの
は40歳過ぎだった。
ちょうど”銭形平次”で三輪の万吉親分役に就いて
から2~3年後の頃である。
遠藤さんは身長が176㎝もあった。
1928年生まれの方としては、かなり大柄である。
それが個性として認知されれば良いが、目立ち過
ぎてしまうマイナス面もある。
映画やドラマの主役を張る俳優は、意外なほど小
柄なことが多い。
そのため、遠藤さんのような大柄の俳優が同じ画
面にいては、主役がかすんでしまうと判断されたの
かもしれない。
それにしても遠藤さんほどの能力を持っておられ
ても、すぐには収入に結びつかないとは、俳優の世
界は実に厳しいものである。
~続く~