不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

住めば都・山間部編 その④

 催眠商法の営業マンに「家に行っても良い
か?」と言われれば、普通だったら「それは
困ります」となるのが普通である。
 だが、このお茶屋さんのおばさんは、そう
ではなかった。
「良いよ、私のクルマに付いておいで」とあ
っさり申し出を了承した。
 そして自分のクルマに乗り込んだのだった。
 このあたりが、このお茶屋のおばさんが普
通の人とは違うところである。
 おばさんは、自分の車に乗り込むとすぐに
走り出した。
 営業マンも見失っては大変と、すぐに後を
追った。
 営業マンにとっては飛んで火にいる夏の虫
である。
 自宅訪問を受け入れてくれるお客など、滅
多にいるものではない。
 こんなカモを逃してはならない。
 こんなについている日はまたとない。
 営業マンの頭の中は皮算用で大忙しだった
であろう。
 
 この日おばさんは、他に用事もなく、後は
自宅に帰るだけだった。
 クルマは市街地を走り抜ける。
 今日は他の用事は済んでいるので後は家に
帰るだけだ。
 
 クルマは山間部に差し掛かる。
 クルマは速度を落とすことなく走っていく。
 おばさんは営業マンに自分の家の住所を教
えてはいなかった。
 クルマでついてくるのを許可しただけであ
る。
 営業マンは欲に取り付かれているので、そ
んな肝心なことを尋ねずに後を追っていたの
だった。

 ~続く~