不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

古着屋でピンチに陥る。その③

 そのジーパンははいた時には、スポッっと
入ったのだが、さて脱ごうとした時には抜け
なくなっていた。
 こんなことがあるのか!
 はめた指輪が抜けなくなった、という話は
よく聞くが、ジーパンでもそんなことが起る
とは思ってもいなかった。
 しかも、ここは古着屋の試着室の中である。
 どうしよう!
 試着室の中から店員さんを呼んで助けても
らおうか。
 だが、どうする?
 幸い、このジーパンは200円という激安
価格である。
「先に200円払いますから、このジーパン
を切ってもらえませんか?」と頼もうか。
 200円でこの状況から脱せられるのなら
安いだろう。
 しかし、店員さんに今の私の格好を見せる
事自体が恥ずかしい。
 それ以前に大声を出して店員さんを呼ぶの
さえ抵抗がある。
 私は恥ずかしいこと、格好悪いことはいく
らでも経験しているので割とそうしたことに
は平気な方だが、今回は初体験の部類に入る。
 初めての恥ずかしい体験とあれば、恥ずか
しさは倍増してしまう。
 困った。
 一刻も早くこの状態から抜け出したい。
 私は、もう一度力を入れてジーパンを引っ
張ってみることにした。
 ジーパンなので破れることは無いだろう。
 せぇのっ! 
 思いっきり引っ張ると、ジーパンは抜けた。
 良かった。
 私はそのジーパンをよく確かめることなく、
そのままハンガーにかけた。
 ファッションに詳しい方なら、それがどん
ジーパンなのか改めて確認するのだろうが、
私にはそんな余裕はなかった。

 私はその後も、自分に合ったサイズのズボ
ンを探した。
 結局リーバイスの513、ビッグジョンの
WOLVO、そして無名メーカーのズボンを購入し
た。
 今回の購入品も、一回も着用していないの
では?というような品ばかりだった。
 掘り出し物は見つかったものの、そこに至
る道は険しかった。
 あの時、あのままジーパンが抜けなかった
ら、と思うとぞっとする。

 得をしようとすると、それなりの困難が待
ち受けているものなのかもしれない。