不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

お札を収めに行く。

 毎年12月30日は、氏神である八幡社でお札収
めがある。
 と言っても、それほど大掛かりなものではなく、
大きなダンボールが本殿の正面横に置かれ、そこに
町内の人が持ってきたお札を入れ、後で焚き上げる
のである。
 我が家にも、町内会を通じて配布された秋葉神社
の火災よけの札と菩提寺が送ってくる大般若転読の
札があるので、この日に収めに行くのである。
 秋葉神社の札は、この町内で大昔から配布されて
いるもので、町内の役員の人が秋葉神社へ参拝し、
祈祷を受けた札を町内各戸へ配るのである。
 配る、と書くと何か無料っぽいニュアンスが感じ
られもするのだが、無論このお札は無料ではない。
 役員の参拝と祈祷に要した交通費や祈祷代などは
町内会費から支出されているからである。
 つまり、町内の人はこの札を町内会を通じて購入
している、ということになるのである。
 特に信仰しているわけでもないのに、札を強制的
に買わせるというこのシステムに私は疑問が無いわ
けではないが、これも地域の伝統文化の一環として
大目に見ることにしている。
 このシステムに疑義を唱えるとなると、いろいろ
と面倒なことになり、町内の世間話に格好の話題を
提供するだけであることは目に見えているからであ
る。

 菩提寺から送ってくる大般若転読の札にも私は興
味が無い。
 この寺は他の寺と同様でお金が大好きで、沢山お
布施をする檀家へは副住職が一軒ずつ札を配って廻
るのだが、私の様な者の家には郵送で送りつけるの
である。
 私には、このような札は必要ないのだが、寺側が
勝手に送りつけているのであるし、送り返すのも面
倒なのでそのまま受け取っているのである。

 八幡社に着くと、社内では数人の役員の人が新年
の準備をしている。
 臨時のテントを組み立てている。
 この八幡社では大晦日の深夜零時から参拝者に甘
酒を振舞われる。
 新年の行事と言っても、目立つのはこの甘酒配布
くらいで地味なものである。それでも、結構手がか
かるので役員さんも、それなりに大変である。
 これら役員さんが、熱心な信者か?と言うと実は
そうでもない。
 町内の行事として行っているだけである。
 八幡社を介することにより、町内の人とのコミュ
ニケーションに円滑さをもたらそう、としているの
である。
 宗教施設や行事をコミュニケーション・ツールと
して使用する、ということは、日本の伝統的な交際
技法のひとつであり、有効な手段なのである。

 私は、札を備え付けの段ボール箱に収めた。
 その後、本殿を参拝した。
 硬貨を賽銭箱に入れて手を合わせた。
 お賽銭が何だかリサイクル費用に思えてきた。

 私は、それからスーパーへ買い物に行った。
 早くしないとタイムサービスの品が終わってしま
う。
 寒気団が目に見えそうなほど寒い師走の町に自転
車を走らせた。
 寒い正月になりそうである。