不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

メルボルンで葬儀?

 朝早く町内の班長さんが来られた。
「昨晩遅くに亡くなられたんだけれど・・・」
 班長さんは、町内で訃報があると、自分の班の家を一
軒ずつ告知をして回ることになっている。
 役目としては、少々面倒くさいことのようだが、これ
も長年受け継がれてきたことなので今更他の方法に変更
されることはなさそうだ。
 班長さんは、その時プリントアウトされた横15cm
ほどの訃報のお知らせの紙を持ってこられる。
 昔は単に口伝えで、班長さんが亡くなった人の名前な
どを口頭で各戸に申し伝えて回っていた。
 戦後しばらくは、こうして訃報は伝えられていた。
 その後、伝達の手段は手書きのメモをコピーしたもの
を配るという形に替わり、15年ほど前からは、どなた
かの家でワープロで印字されたものを配布している。
 そこにはこうある。

 訃報
 亡くなられた方 ○班 ○山○男様 X歳
 喪主         ○山○郎様
 通夜(仏式)  日時  △日   19時00分
         式場 ◎◎町 メルボルン
 告別式(仏式) 日時  △日   11時00分
         式場 ◎◎町 メルボルン

 なるほど、◎◎町の葬議場で行うとは珍しい。
 でも、メルボルン◎って聞いたことないな。
 メルボルン
 何だか楽しそうな名前ではないか。オーストラリア料
理のレストランみたいな名前である。ワニ料理でも出し
てくれるのだろうか。
 先端を行くことがもてはやされる世の中ではあるが、
葬祭業でメルボルンとは、先を行き過ぎている。
 本当にそんな名前の葬祭業者があるのだろうか。
 黄色い表紙のタウンページで調べてみる。
 葬祭業者なんて数が知れているのですぐに分かりそう
である。
 ◎◎町の葬祭業は?と見てみる。
 ベルホール◎しかない。
 これはどういうことか?
 なるほど。
 ベルホールが聞き違いでメルボルンになったらしい。
 ベルホールがメルボルンになるのか。
 葬儀準備のドサクサには、何が起こるか分からないも
のだが、時にはこういうことも起こるのか。

 太いゴチック体で、「メルボルン」と堂々と印字して
ある。
 そのゴチック体の威張った感じが笑える。
 でも、メルボルンとはねぇ。
 これが、町内の各戸に配られたのだと思うと、不謹慎
ながら愉快な気分になる。
 この紙を持ってこられた班長さんの神妙な顔つきを思
い出すと、何か気の毒な気もしてきた。

 でも、やっぱりメルボルンは笑える。