不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

生体移植と無知だった私

 また興味深い記事が載っていたので要約して引用する。
 名古屋大学・医学部教授の木内哲也氏への臓器移植と
提供についてのインタビューである。
・生体移植で、家族や親戚の期待に応えようと、本当は
提供したくなかったが、無理をして提供に同意したので
はないかというケースがある。例えば、親戚を助けたい
というドナーがいたが、いろいろ聞くと、だいぶ前に一
度会ったきりの関係。周囲からのプレッシャーを受けて
いた。本心を聞き出し、不適切な提供を未然に防ぐこと
が必要だ。
・生体移植手術を簡単なことのように説明し、迷ってい
ると、怖がっているのかなどと言って医師が提供を誘導
するような病院もあると聞く。名大では手術の大変さや
術後の危険性について厳しい説明をする。希望すれば、
手術を受けたドナーに会ってもらい、傷跡も見てもらう。
病院は移植に成功した人の話ばかりをアピールしがちだ
が、提供しなかった人が周囲から責められたり、自責し
ないような配慮も必要だ。
・ドナーの傷跡やおなかに残る違和感は、心の状態と密
接に絡む。提供した相手が元気だとそれほど気にならな
いが、提供した相手が亡くなると、痛みが癒えているは
ずの時期でも、症状が出てくることがある。自分のせい
で亡くなったと思い込んで、家族と疎遠になってしまっ
た人もいる。名大では、あげる人が主役、もっと大事に
してくださいと言っている。

 ここに引用したことは、私が知らなかったことばかり
である。
 ドナーに対して周囲からかけられるプレッシャーにつ
いては考えたこともなかった。
 本心では提供したくはないのだけれども、周囲からの
圧力や成り行きでドナーになってしまった人もいるのだ
ろう。
 ドナーを責めて追い込んでいく病院もあるとは。
 象牙の塔の中では、常識や正義や少し歪んでしまうの
かもしれない。
 私が驚いたのは、ドナーが術後に体や精神に違和感を
持っている、ということである。
 そんなこと知らなかった。
 移植は簡単で安全で術後は速やかに以前の日常に戻れ
る、と思っていたからである。
 健康な体から臓器を取り出して移植するのだから、体
に良いわけがないのだけれど、そんなこと考えてみたこ
ともなかった。
 移植完了、はい皆さん健康になりました、というわけ
ではないのか。そんな簡単なものではなさそうである。
 認識がないとは恐ろしいもので、無知な人間は何事も
ことが済めばあとはめでたし、めでたしで終わる、とつ
い思い込みがちである。
 私も、そうしたおめでたい人間の一種だったわけであ
る。

 自分が移植を頼まれたら、どうするか?どうなるか?
 答えが出にくい問題は、この地上には山ほどある。