不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

誰もいないのに鳴る仏壇のりん

 夜7時前のNHKのラジオニュースを聞いていると、家の前
に車が止まったようだ。
 靴音が玄関に近づいてくる。
 この靴音は、女性のものだ。こんな時間に誰だろう?
 私は、ここ最近、女性恐怖症気味である。と言って、ホモ
とかゲイとかではない。
 来そうな人を思い浮かべる間もなく、来訪者は自分の名前
を名乗った。
 何だ、親戚のMさんではないか。一瞬とはいえ、余計なこと
に気を使って、ちょっと損をした気分である。
 Mさんは、市内に住む親戚ではあるが、そういつも顔を合わ
せると言うわけではない。
 近くの親戚だからと言っても、あまり会わない。
「桃をもらったので、ご仏前に・・・」
 職場の制服のままのところを見ると、仕事の帰りに寄って
くれたらしい。
 どうぞ、上がって線香でも。
「それじゃ、ちょっとだけ」
 蝋燭と線香に火をともし、しばし合掌。
「おじさんとおばさんには本当にお世話になったのに、なか
なか来れなくてすみません」
 いえいえ、忙しいですしね。
 簡単な近況を話していると、仏壇のりんが「チーン」と鳴
った。
 誰も何もしていないのに、突然に響く音。
 うひゃ、こりゃ心霊現象か。
 Mさんは、すっかり取り乱している。
 慌てて、もう一度仏壇を拝みだした。こういった時に、人
の地の部分がでたりするので面白い。かなり必死である。
 それからMさんも何とか平静さを取り戻し、お帰りになった。

 後で、仏壇を良く見てみると、花の枯れた葉がりんの横に
落ちていた。おそらく、この葉がりんを鳴らしたのだろう。

 あの家で不思議な現象に遭遇した、とかいう評判が立たな
いだろうか。
 そうなったら、面白い。

 迷信ほど人を惹きつけるものは無いし、殆どの宗教は迷信
の親戚である。