不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Sさんの旦那さんが亡くなられた。その⑧

 線香を上げ終わると、皆さんは隣の間に移った。
 お茶はいらないと断ったのだが、お茶が出された。
 奥の部屋ではSさんの御遺族にKさん夫婦が、通夜・告別
式について話し合いをしているらしい。
 御遺族側は家族葬ということで町内会の人の参列を断っ
ている。
 Kさんとしては「せめて同じ班の人だけでも参列させてほ
しい」と申し入れをしているようだ。
 これは班内において事前の相談がなされその総意を基
にKさんが掛け合っているわけではない。
 ほぼKさん夫婦の独断である。
 まぁ、経緯はそうであっても班の皆さんは出席したいとい
う気持ちを持っていることであろう。
 私ですら(出たほうが良いな)と思っているほどであるか
ら間違いはないであろう。
  この地域の住民には、家族葬という今風の葬儀形態に
馴染みが薄い。
 班の弔問客は雑談をして話し合いの結果を待つ。
 Nさんの奥さんが「家族葬って、どんな感じ?知ってる?」
と皆に問いかけた。
 私は以前家族葬に出たことがある。
 その時の様子を話し始めた。
 本来の家族葬であれば家族ではない私は出られないの
であろうが、諸処の事情により出ることになっのだ。
 その家族葬はほぼ家族だけで親戚も呼んでおらず参列
しない。
 ご近所さんをはじめとした町内会の方々もかなり大勢来
られたが、丁重に断りした。
 どうしても参列させてほしいという方もおられたが、お断
りした。
 私はそうしたエピソードをお話した。
 「なんか、それって寂しいよね」
 Nさんの奥さんは、そう言った。
 家族葬は最近になって各種メディアで取り上げられるよう
になってきているが、実際にはそれほど多くはないようだ。
 未経験の方も多いようだ。
 寂しいというは、その通りである。
 人がたくさん来てバタバタして混雑するという従来の葬儀
とは大きく異なる。
 人が少ないとこうも違うのかと思わされる。
 
 ~続く~