私は我が家の前に立っていた。
ゆうパックの配達クルマが三軒向こうに停まっていた。
配達員が行ったり来たりしている。
少しして配達員が私に声をかけてきた。
「Sさんのお宅って番地は◯◯番ですかね?」
えぇ~、番地まで憶えていないな。
Sさん宅は、同じ班のご近所さんだが、我が家からは少し離れてい
るのだ。
今Sさん留守ですか?
「そうなんですよ、Sさんの下の名前って◯◯ですか?」
聞かされた名前は、ごく今風の名前だった。
もうすぐ90歳になるSさんの名前ではない。
配達員は、届けようにも該当する家が見つからないと言う。
へぇ~、そんなことがあるのか。
配達員は再度行ったり来たりしている。
そして戻ってきて私に尋ねた。
「Sさんのお宅は◯◯町△△ですよね?」
えぇ~、違いますよ。ここらへんは□□ですよ。
△△は違う場所、あそこの通りを越えて~~。
配達員は住所を間違えていたようだった。
合っているのは◯◯町までである。
どうも新米の配達員らしい。
見るからにそんな感じである。
物腰が慣れていないのだ。
私に間違いを指摘され配達員は配達車に戻った。
地図を再確認しているようだ。
しばらくすると、配達車がゆっくりと動き出した。
見るとクルマの中から配達員が両手を頭の上で大きくつないで輪っか
を作っている。
OKのサインのようだ。
正しい配達場所が見つかったようだ。
配達車は走り出した。
ちょっと頼りないが仕事は丁寧な人に見えた。
それにしても住所を間違うかな?
他所から見たらわからないかな?
私はよく道を尋ねられる。
今回も、そうした一件だった。