市の中心部に用事があって自転車で出かけた。
目的地に近づくと賑やかな音楽が聞こえてきた。
最近の日本のヒット曲のようだ。
音がする方を見る。
駐車場にテントが張ってある。
その周りが飾り付けられている。
あぁ、この土日はここのお祭りか。
当市の中心部は歴史が新しい。
発展してきたのは戦後以降である。
それ以前は建物も少ない空き地ばかりの地域だった。
当地は市の外辺に近い地域の方が、歴史がある。
そういう成り立ちなのだ。
市の中心部は歴史は浅くお祭りの歴史も新しい。
伝統は何もない。
おそらく「町内として、ここでも他所と同じようにお祭りをや
らなくては」という要望に応えて開催されているのだろう。
だが、町内会自体も歴史がない。
お祭りを町内のイベントとして運営することは、いろいろと難
しいそうだ。
町内が新しいこは長所であり短所でもあるようだ。
無言の圧力かけてくる伝統重視派が存在しないので運営がスム
ーズに運ぶ。
その代わり新たに行事として定着させるのは、それはそれで難
しい。
「やらなくても良いのでは?」という声が大きくなると、そう
した意見を汲んで行事そのものが無くなってしまう可能性がある。
私達の町内のように歴史だけはあり伝統重視派の力も強い地域
では、伝統行事を止めるなどということは考えてもいない。
続けることに意義があるとされる。
中には「そろそろ伝統の見直しを」と思っている人たちも従わ
ざる得ない。
惰性で行事参加している人も多いように見えるが、そうした事
情があったとしても行事自体は成立し、それにより町はまとまる。
新しい町内と古い町内、一長一短がある。
私は新しい町内のお祭りを見るたびに、そんなことを考える。
ヒット曲が流れるお祭りのBGMを聞きながら私は目的地に自転
車を走らせた。