入ってすぐ右の受付のカウンターに行く。
すると、近くにいた女性が私にこう告げた。
「受付はあちらです」
女性が示す方向には、移動式のカウンターが置かれて
いた。
そこは本来なら参列者席の区画である。
ここで受付するのか?
会場を見渡すといつもと様子が違っている。
参列者席が会場の半分ほどしかない。
残りは椅子が取り払われてしまっている。
これは、どういうことなのか?
参列者が少ないことを見通して、椅子の数を減らしたの
だろうか?
事前想定を超える参列者が集まり、予備の椅子を並べ
るということはこれまでにも何回もあった。
だが、今回は逆に最初から椅子を半分の数に削っている。
空席ばかりだと少し寂しく体裁が悪いと考えたのだろうか?
どうしてだろう?
誰かに尋ねてみようか?
否、止めておこう。
気が付かなかったことにしておこう。
不自然であるが、そうしよう。
気が付かないふり、知らないふりでその場をやり過ごす。
これの処世術の一つではなかろうか?
~続く~