開始1分前になった。
正面を背にして会長、3役らが並んで座っている。
会長が会場を見渡して声をかける。
「〇班の○○さんは、まだ来てないんですか?」
机の上にはネームプレートが置かれており、どの班の
誰が未着なのかが一目でわかるのだ。
衆目の中でこうして名前を挙げられることは、ちょっと
恥ずかしい。
皆さんがそう思っておられると推測される。
「○○さんは、ここへ来る途中で具合が悪くなって、今
病院に向かっているそうです」
○○さんの隣の班の□□さんが、そう答えた。
「そうですか」
会長は一息置いてから、また会場を確認する。
「〇班の△△さんもまだ来ていませんね」
この時刻になって来ていないとなると欠席は確定だろう。
会場は静まり返る。
その班は欠席者が頻出する班である。
個々に口頭で連絡しているのに、欠席するとはうっかり
忘れてといった類ではないのであろう。
直接注意すれば「あぁ忘れてました」と言って出てくるの
だろうが、そうされなければ、そのまま欠席するつもりであ
ろう。
私が前回出た年度の会長は、その場で携帯電話から直
接電話を入れて呼び出した。
慌てて到着したその人には会場の皆から冷たい視線が
寄せられた。
今年度の会長さんは、どうするのだろうか?
出席者が様子をうかがう。
会長は黙ったままだった。
~続く~