不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Aさん亡くなる。その⑫

 Aさんが無くなる一か月前、Aさんの母親も亡くなった。
 この母親はAさん宅に同居していた。
 実は私はこの事実を知らなかった。
 そんな年配の人がいるとは、聞いていなかった。
 おそらく多くの班内の方々も知らなかったことであろう。
 班の皆に世帯人員を報告しなければならない、という
規則はない。
 従って誰が住もうと自由である。
 私はAさん夫婦とその子息だけが住んでいるものと思
い込んでいた。
 その母親を見かけたことは一度もない。
 何らかの事情があり、外部に姿を晒せなかったのかも
しれない。
 その母親が亡くなった際、慣例となっている訃報の紙
の配布は行われなかった。
 これは極めて異例である。
 Aさんサイドで「訃報の紙を配るのは止めてくれ」と強
い要請があったのだ。
 プライバシーが漏れるのを嫌がったのだろうか?
 紙には故人に関する情報としては氏名と享年しか記
載されない。
 喪主欄の故人との続柄もカットされている。
 知られて困るようなことは無さそうである。
 この訃報は我が家には同じ班と言うことで、班長のN
さんにより口頭で知らされた。
 「香典もお花も辞退ということです」とのことだった。

 ~続く~