Aさんが無くなる一か月前、Aさんの母親も亡くなった。
この母親はAさん宅に同居していた。
実は私はこの事実を知らなかった。
そんな年配の人がいるとは、聞いていなかった。
おそらく多くの班内の方々も知らなかったことであろう。
班の皆に世帯人員を報告しなければならない、という
規則はない。
従って誰が住もうと自由である。
私はAさん夫婦とその子息だけが住んでいるものと思
い込んでいた。
その母親を見かけたことは一度もない。
何らかの事情があり、外部に姿を晒せなかったのかも
しれない。
その母親が亡くなった際、慣例となっている訃報の紙
の配布は行われなかった。
これは極めて異例である。
Aさんサイドで「訃報の紙を配るのは止めてくれ」と強
い要請があったのだ。
プライバシーが漏れるのを嫌がったのだろうか?
紙には故人に関する情報としては氏名と享年しか記
載されない。
喪主欄の故人との続柄もカットされている。
知られて困るようなことは無さそうである。
この訃報は我が家には同じ班と言うことで、班長のN
さんにより口頭で知らされた。
「香典もお花も辞退ということです」とのことだった。
~続く~