不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

スポンジに付いていたもの。

 私は食後の洗い物に取り掛かった。
 用途に応じていくつかのスポンジを使い分ける。
 食器が洗い終わり、次はシンクを流す。
 私はシンクの縁に取り付けられたラックの上のスポンジ
手を伸ばす。
 毎日のことなので、手を目で追うことはない。
 指が、スポンジに触った。
 そしてスポンジを掴む。
 その瞬間、何かが落下した。
 黒く長いもののようだ。
 何だ?
 シンクを見る。
 ムカデだ!
 長く黒いムカデだ。
 私がスポンジごと洗い桶に投げ入れた。
 ムカデは洗い桶の水の中をにゅるにゅると泳ぐ。
 あぁ。気持ち悪い。
 生き物を見た目で判断するのは、どうかと思うが、お
前とナメクジは別だ。
 ただ気持ち悪いだけだ。
 しかも、お前は攻撃してくる。
 見た目の悪さに加え、攻撃性まである。
 私は、洗い桶に水を加える。
 溺死を狙っている。
 ムカデは水に弱いのだ。
 私は、その洗い桶を持って庭に向かう
 ムカデは、まだ動いている。
 逃げられるのでは、と洗い桶の内側を登ろうとしている。
 私は庭に出た。
 そして、洗い桶の水を撒いた。
 無用な殺生は回避された。
 本当は殺害しても良かったのだろうが、わずかな仏心
がそれを拒んだようだ。
 ムカデよ、二度と入ってくるな。
 次は命はないぞ。
 私は、洗い桶の水を切り、家に戻った。