日本では昔から「酒は百薬の長」と形容されてきた。
百薬の長は、いくらなんでも言い過ぎだと思う。
字句通りに解釈すれば、酒はどんな薬よりも優れて
いる、利点があるということになろう。
これは、現実的とは言えない。
「百薬の長」と言うほど薬効があると言う意味なのだ
ろうか。
それとも冗談の一種なのだろうか。
実際には本気で百薬の長だと信じている人は、ほと
んどいないであろう。
いずれにせよ、日本においては古来より飲用アルコ
ール類は高く遇されてきた。
神前でのお供え物には、日本酒が最上とされてきた。
海の幸、山の幸、農作物を差し置いて日本酒である。
神事の後には、お供えの酒が神からのお下がりとし
て参加者に分け与えられる。
参加者は、それを飲む。
盃一杯程度の極少量である。
小量とはいえ、アルコールはアルコールである。
飲めない人は、飲むふりだけでもするように、促される。
形だけでも飲んだことにするのである。
それほど酒は日本の文化に溶け込んでいる。
これほどアルコール類が優遇されてきた文化は、世
界でもきわめて稀である。
次回は、そのあたりについて記していくことにする。