先週の金曜日の夜、私はラジオを聞いていた。
NHK-FMの「DJクラシック」である。
この番組は週替りでクラシックの演奏家らが月一回の
ペースで、DJを務めている。
各週には、そのDJにより異なる副題が付けられてい
る。
この週はヴァイオリニスト千住真理子氏の担当だった。
(以下敬称略)
副題は「恋するヴァイオリン」である。
ここまで読めば「人気女流ヴァイオリニストの番組か。
タイトルからすると、さぞや甘くうっとりするような番組な
のだろう」と思われるかもしれない。
だが、実際の番組はそうしたムードは一切無い。
シリアスさが番組全体を支配している。
甘さを誘うようなものは意図的に排除しているようである。
これは千住のキャラクターによるものであろう。
彼女は「暗い曲が好き」という旨の発言を度々する。
ここまでなら、他でもたまに見かける。
千住の本領はここからである。
この回の放送では「孤独は悪いことではない。むしろ素
晴らしいことである」「孤独は賛美されるものである」と語
った。
この発言はラジオやテレビの世界では、極めて珍しい。
「皆さん、みんなで集まりましょう」というのが放送界の
基本姿勢である。
キャパを稼ぐことが善である、とする認識が放送業界と
それに付随する広告業界の根本にあり、その意向を反映
しているのだろう。
孤独=悪、孤独=忌むべきもの、という思考が、放送界
では常識であろう。
千住は、それをあっさりと否定した。
その上、賛美を勧める発言もしている。
これは見事である。
他におもねることなく、スタイルを通す姿勢は、貴重である。
今後も注視していきたい。