不二家憩希のブログ

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オール巨人「漫才も闘病も全力投球!」⑪

 大柄で普段はエネルギッシュな人は、病気になっ
た時には不利である。
 「あぁ、あの人ならすぐに治るだろう!」
 「あの人が病気?ハハハ、そんなわけないよ」
 日頃から丈夫な人、頑丈な人という共通の思い込
みがある。
 病気とは縁がなく、仮にかかったとしても一晩寝れ
ば治るだろうくらいに見られている。
 オール巨人氏もそう思われがちな人である。(以下敬称略)
 184㎝の長身、鍛え上げた肉体、芸能界最強の一
人とも噂される豪腕である。
 そんな人が病気で苦労しているなんて信じられない。
 薬の副作用でふらふらになっているとは、想像でき
ない。
 だが、巨人は本当にふらふらだった。
 ある時、巨人の友人が劇場にお客として観覧に来
た。
 終演後、巨人は尋ねた。
 「僕の調子、どうだった?」
 巨人は具合が悪いのが、お客さんから見てどうなの
か知りたかった。
 しかし、その答えはあっさりしたものだった。
 「ん?なんともなかったよ。いつも通りだったよ。面白
かった」
 巨人はほっとすると同時に、複雑な気分になったこと
だろう。
 漫才師としては、観客に体の不調を悟られたくはない。
 その一方では(こんなに苦しいのに、傍目にはわから
ないものなのか)という気持ちもあったかもしれない。
 巨人の闘病は、一般には知られていなかった。
 C型肝炎の治療中であることを吹聴していたわけでも
ない。
 知らなくて当然とも言える。
 芸人仲間でも知らなかった者もいた。
 ある日、巨人は駅でたまたま明石家さんまと会った。
 巨人とさんまは、同期入門の盟友である。
 さんまは巨人の顔を見て大声で言った。
 「お前どうしてん?顔色悪いな!」
 さんまは、もちろん冗談のつもりだった。
 巨人は、それには何とかやり過ごした。
 それから数時間後、巨人の元にさんまからのメールが
入った。
 「ごめんな」
 巨人が闘病中であることを、誰かから教えられたのだ
ろう。
 肝炎の治療は孤独なものである。
 見た目は、それほど悪くは見えない。
 だが、気分はいつも不快である。
 体重も減ってくる。
 しかし、感覚的には体が重い。
 そんな巨人の不調を知りつつも、それには一切触れず
黙って見守っている者もいた。
 それは巨人にとって重要なあの人である。
 
 ~続く~