私は普段は基本的に怒らない人間である。
それでも怒ること自体は苦手ではない。
むしろ得意な方と言えるだろう。
怒りつつも冷静さを保っていられる。
瞬間的に次にどういう手を打ったら良いのかが
わかる。
そして殆どの場合勝つことができ、負けたとして
も外部にわかるような形の一定以上のダメージを
相手に与えることができる。
相手は私よりもはるかに巨大な組織であっても
である。
そうした私の評判を聞いたある人から打診があった。
「うちに来ないか?」
スカウトである。
しかし、その人は普通の人ではなかった。
暴力団の大幹部だった。
是非にと、長期間にわたって何度も誘われた。
戦略、戦術の参謀にしようと考えていたのだろうか。
あるいは現場の最前線で使おうと思っていたのだ
ろうか。
だが暴力団である。
そもそも、それは職業ではない。
社会的に認知された存在ではない。
違法を承知の上行動している無法者の集団である。
ある意味、正気ではない。
それに彼らのライフスタイルや生活信条は、私とはか
け離れすぎている。
価値観の一致点がひとつもなかった。
私は丁重にお断りした。
~続く~