ピーター・フォークへのインタビューは、その出生
から始まり少しずつ時代が進んでいった。
そして、話題が青年時代に入るとフォークは唐突
にこう言った。
「私はね、共産党員だったんだよ」
えぇ~!フォークって共産党員だったのか?
米国人で共産党員って、とてもまずいことではな
いのか?
それって告白して良いことなのか?
だが、「だった」ということで今は違うよ、ということ
なのだろう。
それでも言わない方が良いのではないか?
フォークは、1927年生まれで、その青年時代は
冷戦下の真っ只中だった。
当時の米国にとって共産主義は敵対する思想で
あり国家的脅威だった。
1940年代末から50年代前半には、赤狩りが全米
を吹き荒れた。
そして米国共産党は1954年には非合法化されて
いる。
つまり、米国共産党員=反社会的人員ということ
である。
フォークは、そんな時代に共産党員だったのである。
インタビュアーは、フォークからそんなことを聞き出
そうとしていたわけでない。
フォークが勝手に言いだしたことなのだ。
インタビューも、この”元共産党員発言”を、完全に
無視して次の話題に移っている。
いわゆる”スルーする”である。
そんな重い事実を急に持ち出されても、困る。
話として膨らませていくと、インタビュー全体が崩
壊しかねない。
このインタビューは、そもそも”葉巻と私”といった
軽いタッチのものなのだ。
それなのに、相手が対応もできないようなことを突
然言い出すのである。
フォークは本当に変わった人である。 ~続く~