決定的な作品が放送された。
”Prescription: Murder 殺人処方箋”である。
この作品において、フォークは初めてコロンボ警
部を演じた。
フォーク以前にもコロンボを演じた俳優は二人
いる。
初代は、当時41歳のバート・フリードで1960年
7月31日放送の”Enough Rope ”で演じている。
フリードは、50年代からテレビドラマにおいて刑
事、ギャング、保安官といった役で活躍した俳優で、
その時代を知る米国人なら「あぁ知っている!」と
いう存在だそうだ。
身長178㎝のがっちりとした普通の米国人という
感じの俳優である。
”Enough Rope”は、コロンボ・シリーズの原作者
コンビであるリンク&レビンソンの作で、富裕な医師
が愛人と共謀し妻を殺害し、それをコロンボが解明
する、というものである。
このストーリーは、役名などが少し違うことを除けば
”Prescription: Murder 殺人処方箋”とほぼ同じで
ある。
この時の放送は殆ど話題にもならず、関係者以外
には忘れられた作品となってしまった。
続いてコロンボを演じたのは、名優トーマス・ミッチェ
ルである。
この時は、テレビドラマではなく舞台演劇で1962年
に全米とカナダを廻る旅巡業だった。
テレビの”Enough Rope ”に手を加え”Prescription:
Murder 殺人処方箋”と改題し舞台にかけられたのだ。
この時のミッチェルのコロンボの演技は各地で大変
な人気を呼び、コロンボ役の決定版と見なされるよう
になった。
リンク&レビンソンも「もし、もう一度この作品が映像
化されることがるのなら、コロンボ役は是非ミッチェル
に演じてもらいたい」と考えていたそうだ。
然しながら、ミッチェルはコロンボ演じてすぐの1962
年に亡くなってしまっている。
ミッチェルはコロンボを演じた時、既に70歳だった。
この時代の70歳である。
かなりの高齢と言えるだろう。
それに70歳で刑事とはありえない。
しかし、ミッチェルの演技力はそれを逆手に取り、
”退職間近の粘り強い刑事”というキャラクターを作り
上げたのである。
初代のフリードが実年齢41歳で、コロンボは普通の
中年刑事という設定だったところを大きく書き換えてし
まったということになる。
そして、この68年の再度のテレビドラマ化の話が、
原作者コンビの元に持ち込まれた。
のだが、クロスビーに「役がかっこ悪過ぎて嫌だ」と
言われ断られてしまっている。
確かに普通に考えれば、コロンボ役はかっこ悪い役
である。
それでコロンボ役の第2候補として、コンビはリー・
J・コッブを提案した。
コッブは、当人の意向とは関係なく、スケジュール
がどうしても合わず、この話も不調に終わった。
それで仕方なく、次の候補としてあげられたのがフ
ォークだったのだ。
コロンボを演ずるバート・フリード。左の写真はニューヨ
ークにある放送資料館で公開されているものを撮影した
ものと思われる。
当初のコロンボはこんな感じで、ありきたりの刑事役だ
った。
トーマス・ミッチェル。
フォーク以前のコロンボ警部の決定版は、この人が作
り上げた。
有力候補だったリー・J・コッブ。
コロンボ役を演じていたとしたら、こんな感じだったもの
と思われる。
とても良い俳優だと思うのだが、コロンボ役としては、
少々男臭すぎるしかっこ良すぎると思う。
~続く~