不二家憩希のブログ

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ピーター・フォーク 刑事コロンボへの日々 その47

 米国NBCに”殺人処方箋”のレギュラー番組
化の話を持ちかけられたピーター・フォークは、
意外な返答をした。
「そんなことになったら、忙しくなり過ぎるから嫌
だ」
 フォークは、自分が主役のレギュラー番組の
企画なのに、まるで乗り気ではなかったのだ。
 これは、俳優の心理としては極めて異例であ
る。
 俳優は決して公には語らないが、レギュラーの
仕事・この場合は役が欲しいという強い願望を
常に持っている。
 その仕事があれば、収入が安定するからである。
 旅巡業の舞台演劇でも嬉しいものである。
 まして、それがテレビドラマのレギュラーとなれ
ば、尚更である。
 同じスタジオに収録日ごとに通えば良いのだ。
 旅巡業のように、長期宿泊をしたり興行場所を
移動しなくても良い。
 これは、大助かりである。
 それが主役であれば、もう言うことはない。
 俳優として周囲の扱い方も、より丁重になる。
 ギャラも多い。
 何よりやりがいがある。
 だがフォークは、このレギュラーで主役のオフ
ァーを嫌がった。
 何故フォークはそんな反応したのか。
 フォークは自身のことを、単なる俳優とは思っ
ておらず、”芸術家”として捉えていた。
 俳優=芸能人=ギャラさえ貰えば何でもやる、
ということはしたくない、と思っていたのだ。
 逆に自分の表現意欲にマッチすれば、ギャラ
が安く待遇も十分とは言えないような仕事でも
喜んで引き受けた。
 ”刑事コロンボ”で世界的な名声を獲得した後
でも、その姿勢に代わりは無かった。
 ピーター・フォークとは、そういう男なのである。
 
 ~続く~