米国NBCに”殺人処方箋”のレギュラー番組
化の話を持ちかけられたピーター・フォークは、
意外な返答をした。
「そんなことになったら、忙しくなり過ぎるから嫌
だ」
フォークは、自分が主役のレギュラー番組の
企画なのに、まるで乗り気ではなかったのだ。
これは、俳優の心理としては極めて異例であ
る。
俳優は決して公には語らないが、レギュラーの
仕事・この場合は役が欲しいという強い願望を
常に持っている。
その仕事があれば、収入が安定するからである。
旅巡業の舞台演劇でも嬉しいものである。
まして、それがテレビドラマのレギュラーとなれ
ば、尚更である。
同じスタジオに収録日ごとに通えば良いのだ。
旅巡業のように、長期宿泊をしたり興行場所を
移動しなくても良い。
これは、大助かりである。
それが主役であれば、もう言うことはない。
俳優として周囲の扱い方も、より丁重になる。
ギャラも多い。
何よりやりがいがある。
だがフォークは、このレギュラーで主役のオフ
ァーを嫌がった。
何故フォークはそんな反応したのか。
フォークは自身のことを、単なる俳優とは思っ
ておらず、”芸術家”として捉えていた。
俳優=芸能人=ギャラさえ貰えば何でもやる、
ということはしたくない、と思っていたのだ。
逆に自分の表現意欲にマッチすれば、ギャラ
が安く待遇も十分とは言えないような仕事でも
喜んで引き受けた。
”刑事コロンボ”で世界的な名声を獲得した後
でも、その姿勢に代わりは無かった。
ピーター・フォークとは、そういう男なのである。
~続く~