不二家憩希のブログ

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マッサージチェアを運び出す。その④

 父は次第にマッサージチェアを使わなくなっ
ていった。
 マッサージチェアに飽きてきたのである。
 当時としてはナショナルの最新鋭機であっ
たそのマッサージチェアではあったが、その
機能はあまりにシンプル過ぎた。
 基本のマッサージのバリエーションが少なか
った。
 ひとつは、背中の上下をローラーで揉む、もう
ひとつはローラーでさする、だけなのだ。
 そしておまけのようについている微弱電流の
足裏からの通電機能である。
 背中ばかりを毎日マッサージしても、肉体の
疲れはそれほど取れない。
 マッサージによる他動的な筋肉刺激には限
界がある。
 なんでも他者にサービスしてもらえば良いと
いうものでもないのだ。
 父はマッサージチェアに座らなくなった。
 他の家族も使わなくなった。
 やはり飽きたのである。
 このマッサージチェアは、まだ世間に出始め
の頃の電化製品であり、それなりに高価だっ
たはずである。
 だが、使われなくなればただの置物である。
 マッサージチェアは、部屋の隅で家族の誰か
らも省みられることの無い存在になっていった。
 しかし、そんなマッサージチェアも再び脚光を
浴びる日が来たのだった。
 
 ~続く~