我が家の家の前の道は、30年ほど前までは、舗装されておらず、砂利
道だった。水溜りがあちこちに出来ていて、車の轍で道は波打っていた。
町内では、何とか舗装をしてくれないものかと、役所に訴えたのだが、
何の進展もなかった。
可能なことは何でもやったし、いろんなところにお願いに行ったそうだ。
自民党の市議、県議、代議士にもお願いに行ったのだが、何もしてくれ
なかった。町内では、原則自民党支持で、選挙応援にも、十分に協力して
きたと言うのに、冷たいものだった。
政治家なんて、当てにはならないもんだなぁ、と町内の皆さんが、ほぼ
諦めていたところが、思わぬ方向に事は進んだ。
K党の代議士が、舗装を進めるように動いてくれると言うのだ。
町内の皆さんは、驚いた。
K党の関係には、町内では誰もお願いに行っていないのである。それに、
町内にK党の関係者や支持者は、一人もいなかったからである。その代議
士はどこからか、この話を聞いたらしい。
その代議士に会った町内の人は、はっきりと、こう言った。
「お宅が、働きかけてくれるのは嬉しいけれども、そうしてくれても、町
内であなたの党に投票する人は、一人もいないと思うし、今後、何らかの
形で協力を求められても、町内としては何も出来ません」
随分とはっきりとした、また、失礼な物言いではあったが、その代議士
は、次のように言った。
「私は、そんなつもりで申し上げているつもりはありません。ただ、政治
家は、市民のために働くものですから」
町内の人は、大して当てもせずにいた。
だが、道路の舗装は、あっという間に、現実化していった。
即、予算が組まれ、舗装工事が始まった。
政治家の力に、恐れ入ったそうだ。
与党自民党に、長いこといくら頼んでも、どうにもならなかったのに。
自民党は、何もする気がなかったのか?住民をなめていたのか?
権力者とは、弱いものには気がつかないものなのか?それとも、鈍感
なのか?鈍感なふりをしているのか?
選挙運動が始まると、いつも私はこの話を思い出す。