バーニー・マースデンは、そのロックギタリストらしくない小太りな体型なこともあり地味なギタリストという印象を持たれがちだ。
だが、彼はミュージシャンからの信頼が厚く、売れっ子だった。
欲しい音を提供してくれるギタリストだったのだ。
マースデンは、EMIのアビーロード・スタジオでも多くの録音をしている。
彼は、そうした録音の合間の休憩時間に、アビーロード・スタジオの倉庫に入り、ビートルズやピンク・フロイドのマスターテープを聴いていた。
ビートルズのマスターテープである!
それを自由に聴いていた。
誰の許可もなく勝手に聴けた。
ビートルズのマスターテープを聴けるのだから、他のミュージシャンのテープなら尚更聴ける状態にあったということである。
当時のEMIのマスターテープの管理状態とは、そんなものだった。
雑と言うか、無頓着と言うべきか。
欧米的なのか。
今は、改められているとは思うが、当時はそうだった。
超高音質の海賊盤が出ることがあるが、おそらく一時的にマスターテープを持ち出して作っていたのだろう。
当時は管理がザルだったのだ。
考えられない状態であるが、羨ましくもある。
夢のような環境である。
マースデンは、そうした中で多くの名録音を残したのだった。