日本で新型コロナワクチン接種が始まる前のことである。
日本国用のファイザー社、モデルナ社のワクチンの確保の目処がついた、と報じられた。
その数日後、WHOが声明を出した。
「先進国はワクチンを独占するのではなく、途上国にも分配して欲しい」
このニュースも大きく報じられた。
すると国内では一斉に反発する発言が噴出した。
「こうした緊急時には、まず自国用に確保すべき」
「経済格差は致し方ない。国はそれぞれワクチンを入手すべきだ」
そのようなコメントがヤフコメに溢れた。
私はその有様を見て、愕然とした。
(あぁ、日本人には優しさというものは無いのか?)
(自分たちだけ良ければ良い、他所のことまでは知らない、構ってられない、ということなのか?)
私はヤフコメを何ページか読んでいったが、「分かち合うべき」といった論旨のコメントは見つけられなかった。
何という残酷で自分勝手な人たちだろう。
危急時だからそう思うのだろうか?
否、危急時だからこそ、その人の本性が表れるとも言えるかもしれない。
自分だけは、自分の家族だけは、という思いが強すぎる。
強烈なエゴが残酷で暴力的な発想を育んでいる。
私は内心で(こんな人達は滅びてしまえば良い)とすら思った。
今や、その願いが天に通じたのか、彼等は滅びの列に並び、その順番を待っている。
自ら選び承諾し、死の盃を仰いだのだった。