健診を待って座っている際に、年配の男性が計測者に訴えていた。
「前に時間内に他の会場に行ったら『もう定員オーバーだから駄目』と言われて追い返された」
その男性は余程腹に据えかねるものがあったようで、自分を担当する計測者全員に同じことを言っていた。
時間内に行って定員オーバーになるのか?
定員は80名の筈だ。
時間内に行けば、まずそこにあぶれることはない。
私はもう一つ気になっていた。
係員が「56番から60番、最後の人まで」と言っていたことだ。
これは60番が最後、定員というように聞こえるな。
だが、定員は80名の筈である。
健診中止や再開のハガキが来た際にも、定員の変更、縮小とは記されてはいなかった。
私は健診会場の出入り口近くにいた係員に定員の変更があったようだが?と尋ねた。
「申し訳ございません。コロナということで定員を60人に減らしています」
係員は異例なほど低姿勢だった。
連絡が行き届いていないことを承知しているようだ。
急な変更があったのかもしれない。
普通の私だったら、その不手際について軽く抗議をする場面である。
だが、それは控えた。
係員たちは、懸命である。
かつて無いプレッシャーに晒されている。
万が一クラスターが起これば、市民はもとより全国からも猛烈に批難される。
ここは大目に見ることにしよう。
雨はやんでいた。
私は公民館を出て家に向かった。