空模様は曇りだが、降り始めるのは夕方以降という天気予報が出てい
る。
私は洗濯物を持って庭に出る。
お隣のNさんはすでに洗濯物を干し始めている。
朝の挨拶の後、Nさんが呆れた口調で話し始めた。
「今日の天気ももう一つだけれど、何とかならないかねぇ?」
あぁ、新型コロナウィルスですよね。
湿気に弱いと言う報告があるので、6月の梅雨時にはウィルスの活動が収
まるというふうに見てますが。
「そうなの?」
Nさんは半信半疑な口ぶりである。
感染症の専門家でもない私が言うことである。
疑って当然である。
「もう大変よ。マスクを探して店に行くんだけれど、何処にも売ってない」
そうですよねぇ。
「でもI屋に売ってた。外出する時にしようと思って50枚買ってきた」
へぇ~I屋にですか?
I屋は、安売り衣料品を中心に一部生活雑貨も扱っている店である。
衣料品は安いがどれも質が低く耐久性にかける。
日頃からお値打ち品好きの私でも買い物にはいかない店である。
「I屋では『チラシに載せていないから、いくつでも買って良い』ってことだ
ったけれど。穴場ってことかも?」
Nさんはそう付け加えた。
このご時世で数量制限無いなのか。
珍しい。
まぁ私がこの情報を聞いて買い物に出かけても、とっくに売り切れているだろう
な。
もっとも私はマスクはするつもりがなく、自分用には必要としてはいないのだが。
それにしてもI屋にまでマスクを探しにいくとは、Nさんもなかなかの行動力である。
その執念が実ったということであろう。
私はこの情報を承ったが、取り敢えず買いに行く予定はない。
とっておきの情報を教えたのに私の反応が弱いので、Nさんは不思議そうな顔をしている。
まあ、私はそういう人間なのである。