不二家憩希のブログ

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班長の引き継ぎに行った。その②

 私は班長の引き継ぎの袋を持ってKさん宅へ伺う。
 この曜日、この時間帯ならご在宅だろう。
 時にはお留守の時もある。
 幸いにもご在宅だった。
 私は班長引き継ぎの袋を手渡す。
 Kさんは、袋の中身を改める。
 私はそれを眺めている。
 実は私はこの袋を前任者から受け継いで以来、一度
も中身を見ていない。
 本来なら確認するのであるが、していない。
 内心ではやりたくないので、見たくもなかったのである。
 良くないこととは自覚してはいるが、見たくないものは
見たくない。
 袋の中に特別なものが入っていたり、特別なことが記
されているわけではないが、見たくないのだ。
 だが、業務は万全に行った。
 Kさんは、帳簿用のノートを確認している。
 「ここにケーキ君の〆と署名がないね」
 そう指摘され私は書き入れる。
 署名が無いのも当然である。
 今初めて見たからである。
 忘れたふりをしてとぼける。
 Kさんも感づいておられるのだろうが、知らんふりをし
ておられる。
 注意をして気まずくなるのを避けたのであろう。
 さすがの対人力である。
 その他には、不備はなさそうだ。
 「ハイ、それではご苦労様でした」
 私はそう声をかけられた。
 これで班長業務は引き継がれた。
 帰り道の足取りは軽かった。